今小町
作曲:菊岡検校
筝手付け:八重崎検校
作詞:不詳
三絃:二上り→三上り(高一下り)→本調子
筝:平調子→中空調子
京手事もの
松の位に柳の姿、桜の花に梅が香を、込めて零るる愛嬌は、月の雫か萩の露、露の情けに憧れて、我も迷うや蝶々の、恋い死なん身の幾百夜、通う心は深草の少将よりも浅からぬ、浅香の沼の底までも、引く手数多の花菖蒲、たとえ昔の唐人の、山を裂くちょう力持て、引くとも引けぬ振り袖は、粋な世界の今小町。
(手事)
高き位の花なれば、思うに甲斐も嵐山、されど岩木にあらぬ身の、粋な男の手管には、否にはあらぬ稲船の、沈みもやせん恋の淵、逢わぬ辛さにあしひきの、山鳥の尾の長き日を、恨み託ちて人知れず、今宵逢瀬の新枕、積もる思いの片糸の、解けて嬉しき春の夢。
「こりゃThe京手事ものや~」
10年ぶりに弾いて思いました。
昔は「許し物」だったそうで。
今でもこの制度をとっている先生もおられると、mixiのコミュ投稿で読んだことがあります。
そのとき話題になっていたのは「船の夢」でした。
先生に「船の夢」って「ゆるしもの」で、習う時に特別になにかしないと(金銭授受など)いけないのか、とたずねると、
「そんなことしてたら曲が伝わらへんわ。それに「船の夢」くらい誰にでも教える。」
おおらかな先生のおかげで、
ぐさぐさの私もなんとかこの業界に居ることができているのです。
今小町のスタートは三絃のイ一=神仙。
その二上りで、三の絃を上げて、その後一の絃を上げる、ちょっと変わった調絃・・・そしてやっかい。
壱越スタートでも神仙スタートでも歌えますが、
調絃替えが大変ね。
手事もちょっと不思議な運指になっているかしら?
歌に難しいところはないです。
いかにも京手事もの。
華やかなフレーズに加えて途中に中散しもはさんであって、
緩急つけつつサクサク展開する、
でも聞き応えあり。
後輩の師匠職格披露曲だった。
声が綺麗で丁寧に歌うコだったのでよくおぼえています。
今度の社中演奏会の演目だということで久しぶりに引いてみました。
習った当初よりもずっと歌詞が入って来ました・・・色っぽい曲やね。